前回に引き続き雅姫さんの食器棚のおはなし。今回はこれまで雑誌などでもたびたび紹介されているダイニングのシンボル的存在、ふたつの黒い棚についてうかがいました。ひとつは、大きく存在感のある水屋箪笥。もうひとつは、ガラス扉の美しいショーケースです。どちらも、雅姫さんの日々の暮らしを支える器たちを、使うために、飾るために、そして楽しために、欠かすことのできない大切な場所になっています。それぞれの棚に込められた思い、そして器たちとの静かな時間について、ゆっくりとご案内していきます。


白い器がひときわ映える、小引き出しが並ぶ水屋箪笥

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存在感のある黒い大きな水屋箪笥は雅姫さんが長年愛用している家具のひとつ。
「下段に小引き出しがたくさんついていて、和の水屋箪笥らしさはありつつも、どこかヨーロッパ調にも見える。その絶妙なバランスが気に入って、購入を決めました」と話します。
もともとは木の自然な色合いでしたが、カシューと呼ばれる漆に似た塗料で黒く塗り替えたことで、さらに和にも洋にもなじむ佇まいへと生まれ変わりました。
「黒にしたら、白い器がぐっと映えるんです。アンティークのお皿も作家さんの器も、ニュアンスが似ていれば一緒に並べても違和感がなくて、むしろその混ざり合いがいい景色になるんですよね」
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器は気に入ったものをひとつずつ手に入れていくのが雅姫さん流。あえて揃えなくても個性豊かな器が食卓に並ぶのを楽しみます。古いものも、作家ものも、それぞれに個性があるのに、どこか統一感があるのは、雅姫さんの“選ぶ目”にブレがないからかもしれません。

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この水屋箪笥は、見た目だけでなく、使い勝手の良さも魅力です。奥行きがしっかりとあるため、器をたっぷりと収納できる一方、高さは控えめなので、上に手が届きやすく、飾り棚としても使いやすくなっています。季節の花を置いたりと、暮らしの中で表情を変えています。
さらに、上下で分割できる構造のため、並べて置いたり、模様替えのときに自由にレイアウトを変えたりと、楽しみ方にも幅があります。
雅姫さんにとって、この水屋箪笥は「使うための棚」でありながら、暮らしのリズムに寄り添う柔らかな存在でもあるのです。

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京都の観山堂でみつけた豆皿たち。薬味をいれたり、お醤油をいれたり。お客様がいらしたときにも大活躍します。木のお盆は落合芝地さんの作品。

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写真上は京都の友人が探してくれた銘々。下の3つは季節の花の絵柄がかわいい京焼。


宝物をしまうショーケースは、並べて、飾って楽しむ

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隣に並ぶ黒いショーケースは、少し違った使い方で楽しんでします。
ここには、フランスで見つけたアンティークのお皿や割れてしまったけど修復した大切な大皿、ふだんは使わないけれど特別な日に選びたくなるカップ&ソーサー、そしてアクセサリーなどが静かに収められています。
「ショーケースの上のアクセサリーはときどき中身を入れ替えて楽しんでいます。春には軽やかなガラスやパール、冬には少し重みのあるゴールドものを並べたり。バタバタと仕事をこなして1日を終えた夜に指輪やバングルを外して、この棚のトレーの上にそっと休ませています」と語る雅姫さんにとって収納とは単にしまう作業を意味するのではなく、そこに「飾る」という意図をもつことで、日常の小さな喜びとなるのです。ショーケースは季節の移ろいや気分の変化を受け止める、雅姫さんの「宝物の棚」となっています。